特定非営利活動法人 NPO フェア・レーティング
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2.格付け時事解説

ドイツにおける信用格付け

 NPOフェアレーティングの会員の皆さんは、言うまでもなく信用格付けの社会的な立場については良くご存知でしょう。アメリカでその歴史が始まり、やがて世界中へ広まっていったという、その経緯についても、ここで繰り返す必要はありませんね。そしてその場合、とくにアメリカでは直接金融市場が高度に発達していた(いる)ことが重要な意味を持っていた(いる)こともご存知だと思います。
 ドイツにおける信用格付けの実情を見るにあたっては、このような観点が、まず重要となります。すなわち、ドイツでは間接金融が長い間主流で、債券発行による資金調達は、重要視されてきたとは言い難いからです。
 これから、ドイツにおける信用格付けについて、目についたことをお伝えしようと思います。

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≪第1回≫

DVFA―――ドイツにおける格付け普及の先駆者

 2006年10月にハンブルグ大学経済社会科学部に客員教授としてやって来て以来、コーポレート・ガバナンス・スコアリングの研究に従事していますが、同時に、いわゆる格付けについても接することが多くなります。
 NPOフェアレーティングの研究プロジェクトの一環として、2005年夏にヨーロッパ調査旅行が行われ、ロンドン、パリ、バーゼルなどと共に、フランクフルト(マイン)で格付け関係のインタビューが行われました。そこでの対象はDVFAです。以下、DVFAの資料に基づいて、見ていきます。
 DVFAは、Deutsche Vereinigung fur Finanzanalyse und Anlageberatungがその正式名称です。日本語に訳せば、「ドイツ財務分析・投資顧問協会」ということになりますが、わが国に紹介されたことはないようで、その正式な日本名(があるとしても、それ)は定かではありません。
 1959年10月23日、24日に、フランクフルト(マイン)で、「企業評価と投資コンサルティング」というテーマで、金融機関の投資コンサルタントのために意見交換会が行われました。主催者は「金融制度研究(Zeitschrift fur das gesamte Kreditwesen)」という専門経済研究誌でした。そして、大会2日目の夜、アメリカと同様に、証券分析に関する問題を扱う仲間の連合を作ろうという提案がなされたのです。
 こうして、ダルムシュタットで、登録団体(公的な団体)としてのDVFAが設立されたのです。その創立メンバーは、カルステン・P・クラウセン教授、ミハエル・ハウク、ペーター・マウラーの3人でありました。
 1960年2月20日のDVFAの設立の後、前述の意見交換会への参加メンバーに対して、会員としての勧誘状が送られました。そこに記されていたのは、「すでに証券分析や投資コンサルティングの実務に従事している」人のみが、会員となれる、という一文でした。それに続いて、「分析者の育成は、協会の任務ではない」という、現代ではもはやあてはまらないとは言え、1960年代初頭としては理解できる叙述がなされていました。時は変わり、今日では分析者の教育、再教育は、協会の活動の核心部分、あるいは最重要なものとさえ言えるでしょう。
 1968年の会員名簿には、証券分析に携わる157名の名前があります。会計原則体系化の年である1985年の12月3日、この、証券専門家による協会は創立25周年を迎え、およそ300人の個人会員を擁していました。現在DVFAにはおよそ1100人の個人会員がいます。彼らは400以上の指導的な投資会社、銀行などで活躍しています。
 DVFAは、国際的な標準に対応した教育、上級教育、および最適な金融コミュニケーションのための場の提供などによって、メンバーの競争力を保証しています。
 1991年に、とりわけこの職業に属するメンバーの教育・上級教育をさらに専門化するために、DVFA有限会社が設立されました。
 DVFAは、今や、財務分析の代表的な専門化養成機関であり、10年間で1500人のCEFAR (Certified Economic and Financial Analyst)の称号を与えた卒業生を輩出しています。これは、正確にはCEFA投資アナリスト/DVFAと称し、その勉強を終えた後、CIIAR (Certified International Investment Analyst)のコースへ進むことができます。さらに、CCrAR (Certified Credit Analyst/DVFA)というコースも提供しており、そして基礎ゼミ、専門ゼミ、エグゼクティブ・ゼミも提供しています。また、SCC(Small Cap Conference)、SEQ(Smart Equity Conference)などのアナリストのコンファレンスやフォーラムの中心的な開催者でもあります。
 2000年にDVFAはDeutsche Vereinigung fur Finanzanalyse und Asset Managementと改名しました。それは、90年代における資産マネジメントの大きな発展に、名称的にも合わせるためでありました。AnlageberatungをAsset Managementに変更したことは、アメリカを中心としたAsset Management業界の振興に鑑みたこと、そして専門用語としてAsset Managementが充分に定着したことによるといえます。
 こうしてDVFAは、90年代後半からコーポレート・ガバナンス格付けに乗り出しました。ただし、すでにS&P、Moody’s、Fitchの3社がヨーロッパでも積極的に活動していたこともあってか、信用格付けについては、その実務への従事には進出しませんでした。ただし、信用格付けについて、その知識・技術の普及については、早くから活動しており、前述のCCrAR (Certified Credit Analyst/DVFA)に関しては、企業の審査業務担当者の間で、この資格(称号)を所有する人は数多いのが実情のようです。この意味でDVFAは、ドイツにおける格付け普及の先駆者ということができます。
 DVFAは、フランクフルト・旧証券取引所で行っている独自の教室と並んで、ニュルンベルグ専門単科大学(Fachhochschule)と組んで、格付け教育のコースを開いています。16日間の職業専門教育としての、前述のCCrAのためのポストグラデュエート教育、そして11日間の、同様に職業専門教育としての、格付けアナリストとしての上級教育(Weiterbildung)を提供しています。この2つのコースともに、銀行や企業の実務に関連して、格付けやバーゼルⅡというテーマに関する知識を提供するものです。これらは、内部格付け、外部格付け、支払い能力や信用リスク、ならびに資本市場関連の他人資本調達、社債の発行や流通という分野を包含するものです。同様にそれには、格付けアドバイスも入ります。この教育で対象とされるのは、銀行、保険、資本投資会社、格付け会社、そして一般企業の専門社員、首脳社員です。それに加えて、格付けアドバイザー、公認会計士、企業コンサルタント、税理士、経済専門の弁護士なども入ります。
 このようにDVFAは、格付け会社ではありませんが、実質的にはドイツにおける、格付けという活動の全体をカバーし、教育・啓蒙するトップ企業といえます。

(追記)第2回は「ドイツの格付け会社」についてお送りする予定です。

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≪第2回≫

ドイツの信用格付けと格付け会社(1)

 発行者が、その財務的債務を満たす意思および能力をどれだけ持っているか、すなわち発行者の信用能力を全体として表す意見である信用格付け(Kreditratings、発行体格付けにあたる)、そしてある特定の発行にあたっての、その返済見通しを表す発行格付け(Emissionsrating)とならんで、保険の分野での、財務力格付け(Finanzkraftratings)が重視されています。これは、保険会社の、保険業務から生じる契約義務を果たせる能力を判断し、保険会社としての全体的な評価を意味しています。これらすべてを、同じ格付け会社が行うことも多いです。
 ドイツでは、3つの国際的に知られた格付け会社であるフィッチ、ムーディーズ、スタンダード・アンド・プアーズ(保険の分野ではさらに、国際的に活動している格付け会社であるA.M.ベストも入る)の他に、ドイツの、あるいはヨーロッパ各国からの格付け会社が活動しています。その主たる会社は次の通りです。(社名のアルファベット順)

会社名 本社所在地
A.M.ベスト・ヨーロッパ(保険格付け) ロンドン イギリス
アセクラタ ケルン ドイツ
オーストリア・ビジネス・レイティング(有)(中小企業格付け) ウィーン オーストリア
キャピタル・インテリジェンス リマソル キプロス
コフェイスレイティング(Cofacerating.de)(有) マインツ ドイツ
クレディットリフォーム・レイティング(株) ノイス ドイツ
eレイティング・サービス(株) デュッセルドルフ ドイツ
フィッチ・ドイツ(有) フランクフルト(マイン) ドイツ
GDURミッテルシュタント・レイティング・エージェンシー フランクフルト(マイン) ドイツ
グローバル・レイティング(有) パッサウ ドイツ
オイラー・ヘルメス・レイティング(有) ハンブルグ ドイツ
ムーディーズ・ドイツ(有) フランクフルト(マイン) ドイツ
RSレイティング・サービス(株) ミュンヘン ドイツ
スタンダード・アンド・プアーズ フランクフルト(マイン) ドイツ
TUVラインランド・ベルリンーブランデンブルグ ケルン ドイツ
URAウンターネーメンス・レイティング・アゲントゥーア(株) フランクフルト(マイン) ドイツ
ビジュアル・ファイナンス ヴィンタートゥーア スイス

注1 ドイツでは、株式公開をしない有限会社が、大企業でも多数あります。その理由として、株式会社は、特に1976年共同決定法による様々な制約が課されることによる、といわれています。
注2 ドイツにはフランクフルト(マイン)、Frankfurt am Main(マイン河畔のフランクフルト)の他に、フランクフルト(オーデル)、Frankfurt an der Oder(オーデル河畔のフランクフルト)があります。後者は旧東ドイツの町で、ポーランドとの国境、オーデル川に面しています。ドイツ(旧東ドイツ)は、オーデル川(die Oder)とナイセ川(die Neise, sはエスツェットといい、このフォントがない時は化けてしまうので、ssで代用します。Die Neisse)をポーランドとの国境とすることをポツダム協定(1945年8月)で決めており、いわゆるオーデル・ナイセ線というものです。日本でフランクフルトと言えばマインの方の町をさすのが普通で、オーデルの方は、行く日本人さえ稀と言われます。ちなみに人口は7万(オーデル)、65万(マイン)の違いがあります。


 このうち、ドイツの市場で高い評判を得ているのは、ムーディーズ、スタンダード・アンド・プアーズ、フィッチ(銀行以外の会社の格付けについて)の3社であるといわれていて、保険会社の格付けについては、A.M.ベストが入ります。すなわち、これらの格付け会社は、取引所に上場している企業の格付けというマーケットでのシェアを占めており、それ以外の格付け会社は中規模以下の企業の格付けに従事している、ということです。
 とりわけスタンダード・アンド・プアーズは、保険産業の企業の格付けでも活動しています。また、保険産業の企業(ただし、再保険会社は含まない)の格付けについては、アセクラタが財務力格付けに特定して活動しています。国際的に活動する格付け会社であるA.M.ベストは特殊な立場にあり、保険産業の企業の格付けに専門化するとともに、特にアメリカ合衆国のマーケットで代表的な会社となっています。また、大規模な格付け会社と並んで、ドイツの保険業に対しては、さらに一連の小規模な、企業格付け、商品格付けを提供する会社があります。例として、モーガン&モーガン、マップレポート、シュティフトゥング・ヴァーレンテストなどが挙げられます。

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≪第3回≫

ドイツの信用格付けと格付け会社(2)

 債券に関しては、ドイツでは、発行市場に関しても、流通市場に関しても、(特に外国と比較して)価格決定および投資にあたり、格付けの実務的重要性という意味では、現在のところあまり重視されてはいないとされます。とは言っても、とりわけ国際市場での債券発行にあたっては、三大格付け会社のうちのひとつ、たいていの場合は少なくともムーディーズかS&Pによる格付けが必要とされます。投資適格水準の格付けを得ることは、債券市場への参入、とくに国際市場については基本的な前提条件であり、また発行価格に強い影響を与えるものです。資金提供者、投資家が格付けに強く注目しつつあることから、格付けはマーケティングの手段としても使われます。格付けはCPの市場でも必要とされています。さらに、ポートフォリオやその他の資産の構成にあたっての投資基準にも頻繁に用いられます。さらに、充分に高い格付けというのは、その証券が中央銀行の欧州内での担保としての考慮の対象となるための前提条件となっています。
 金融機関が、契約相手の支払い能力、リスクマネジメントなどに関して行う情報評価に際しては、最終的に自らの分析に基づいて得られる組織内部での格付けプロセスにとって、格付け会社が行う外部格付けは、従来、二次的な情報源としかみなされていません。しかしながらこれは、バーゼルⅡの施行と、それに対応する金融機関の自己資本に関する要件についての、改訂されたEU指導要領の規準に鑑みると、明らかに変わらなくてはなりません。
 資本投資会社(Kapitalanlagegesellschaft,KAGと略されます)については、自らの投資政策にあたり、投資対象の格付けに留意することは、今のところ法的には義務とされていません。しかしながら、連邦投資・資産管理連盟(Bundesverband Investition & Asset Management,BVIと略されます)の説明によると、格付けは、内部的に資本投資会社の投資の意思決定の中立的な規準として考慮され、資本投資会社の自らの信用調査を補助するとされます。
 保険会社に対しては、その顧客同様、一般投資家が大きな国際的格付け会社の「保険者財務力格付け(Versicherer-Finanzkraftratings)」を利用しています。このようにして、保険会社にとっても有利な格付けによって他人資本をよりたやすく、より安価に調達することが可能となり、こうして競争優位を与えることになります。
 格付けは、保険会社にとってマーケティングにも、そして保険の売込みにも使われ、次第に一般大衆にも利用されつつあります。このような側面からも、特に大規模な保険会社にとって、高い格付け判断を提示することができることの必要性が生じています。ただし、ここで当然生じてくる問題として、「承認された格付け会社」の格付け判断というものが、そうこうしているうちに、資産投資の確実性の評価に使われうることから、保険産業における法的な監督の要求・必要性へとつながっていくことになります。
 こうして、全体としてみると、ドイツの上場企業にとって、そして信用経済および保険経済にとって、格付けはそれに対する監督の問題がまだ取り上げられていないとはいえ、一段と重要な役割をはたしていることが認められます。すなわち、ある面では大企業や国際的に活動している企業にとっては、格付けがビジネス上必要なものとなっており、事業計画の策定や事業政策において、考慮されるものになっている、ということです。一方で、小規模投資家や機関投資家にとっても、投資決定にあたり、利用されるものになっているということです。
次回は、ドイツでの格付け会社への監督の問題について触れ、それからドイツ地元の格付け会社を紹介する予定です。

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